プロローグ


薄暗い夜の学校の廊下、震えながら帰路に急ぐ。
コツコツと響く足音と胸の中で激しくのた打ち回っている心臓の音がやけに大きく聞こえる。
そんな子供の背後から、音もなくスルスルと近づいていく白い布を被った人間のような姿。


半年ほど前から行方不明事件や意識不明の重体になる事件が急増、その原因も犯人もなにもわからない状態。
わかっていることと言えばそれが起こるのは明かりのない日が暮れた夜のみだということ。


それが幽霊によるものだという噂が立つのに時間はかからなかった。


先程の子供の声にならない悲鳴があがる。



それから何時間経ったのち、日の昇った明るい外にレイピアは放り出されていた。
時空を超える摩訶不思議な木に乗り込み、生まれ故郷を離れたところまでは覚えがある。


あぁ、やはりついていくべきではなかったのだろうか。


やけに長い間空中に浮いている感覚を味わった後、岩肌に叩き付けられるような痛みが左半身を襲う。
うっすらとぼやける視界の中、そっと立ち上がり頭を振ると少しずつ視界が開けてくる。
スクラップの山が無数に広がるゴミ置き場、左半身をかばいながらその一つの山から慎重に降りて周りを見渡すが、ごちゃごちゃしているせいで二人も木も見つかる気がしない。
どこに行けばいいかもわからず途方に暮れてため息をつくレイピアの肩を、なにかががっしりと捕まえた。


「ここで何をしている、今は学校に行く時間だぞ」



超巨大学校にて仕切られてきた世界、オブシディアン
いつも通りだった日常が少しずつ狂いだしていく
新しい世界での新たな物語





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